大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1889号 判決

控訴人は、本件建物が請負代金の支払を確保するために譲渡担保に供されたものであるとしても、右譲渡担保契約は代物弁済に関する特約はなく、従つて本件建物所有権は未だ確定的に被控訴人に帰属するに至つたものではないから、控訴人は被控訴人に対し右請負残代金六十五万五千円の支払と同時に本件建物の所有権移転登記手続を求める旨主張する。この点につき審案するに、控訴人が本件請負代金の支払を確保するために本件建物を譲渡担保に供したこと及び右請負残代金六十五万五千円が未払であることは前述のとおりである。被控訴人は、昭和三十年二月二十三日到達の書面をもつて控訴人に対し右請負残代金を同月二十七日までに支払うべき旨催告したが控訴人において右催告期間を徒過したので右建物所有権の返還請求権を喪失し右建物は確定的に被控訴人の所有に帰した旨主張し、成立に争のない乙第二号証の一、二によると右催告の事実が認められるが、本件譲渡担保契約において、被控訴人と控訴人との間に、若し控訴人において弁済期に被担保債権の支払をしないときは本件建物所有権を当然且確定的に被控訴人に帰せしめる旨の特約がなされたことは、全証拠によつてもこれを肯認するに足らないところであり、却て前掲甲第一号証の一、二に当審証人小野友嗣の証言、原審及び当審における被控訴人及び控訴人各本人尋問の結果を綜合すると、当時右のような特約は締結されなかつたものであることが認められる。譲渡担保契約は債務の弁済を確保することを目的とするものであるから、通常の場合においては、債務者が債務の弁済をしないときに担保物を処分しこれによつて得た金銭から優先的に債務の弁済を受けなお剰余があるときはこれを債務者に返還する趣旨のものと解するのが相当であつて、従つて前記のような特約が明白になされた場合でない限り被担保債権が弁済期に支払われないことにより債務者において担保物の所有権返還請求権を喪失し又は債権者においてその所有権を当然且確定的に取得するものではないといわなければならない。本件譲渡担保契約についてみるに、被控訴人の前記催告により昭和三十年二月二十七日限り被担保債権である請負残代金の支払期が到来したものと認められるが、控訴人においてこれを徒過し支払をしなかつたことは控訴人の争わないところであるけれども、右譲渡担保契約には前記特約がなかつたのであるから、控訴人が右支払をしないことによつてその担保物所有権返還請求権を喪失し又は被控訴人において当然且確定的にその所有権を取得したものではないことが明白である。

(薄根 村木 山下)

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